調査範囲拡大? 紛争鉱物調査テンプレートver.3.00

EICC等の出しているConflict Minerals Reporting Templateの新バージョン3.00が4月9日に出ました。
これまで最新版だった2.03a の改訂日が昨年の7月25日ですから、約8ヶ月ぶりの更新です。


おおまかに、会社情報、デューデリジェンスに関する質問、体制に関する質問、精錬業者識別番号に変更がありましたが、本稿では、実務的に大きなインパクトがありそうなデューデリジェンスに関する質問の1)と2)に絞ります。



結論を先取りすれば、旧バージョンの質問1が、新バージョンの質問1と質問2に分かれた印象で、新バージョンの質問1のせいで、調査範囲がシャレにならないくらい広がると解釈する余地がある感じです。


旧バージョンの質問1は次の通り。


以下の金属(タンタル、錫、金、タングステン)は御社が製造又は製造契約を締結している製品の機能性又は生産に必要ですか?

新バージョンの質問1が新たに追加され、次のような質問が追加されました。

紛争金属は御社の製品に意図的に使用していますか?

また、新バージョン質問2は次のようになり、旧バージョンの質問1から、<機能性又は生産に必要>から「生産に必要であり、かつ、含有」しているか否かに変更されました。

紛争金属は御社の製品の生産に必要であり、御社が製造又は製造委託している完成品に含有していますか?

このような変更の背景がいまいちわかりませんし、質問1が追加された意義が良くわかりません。


新バージョンの質問1の”Instructions”は次のとおりです。

1.これは、御社又は御社のサプライチェーンが紛争金属を意図的に製品に加えているか否かの申告です。紛争金属ごとに「Yes(はい)」又は「No(いいえ)」で回答してください。この質問への回答は必須です。「No(いいえ)」という回答に対して、コメント欄に具体的な内容の記入を要求する企業もあります。


 新バージョン質問2の”Instructions”は次のとおりです。

2.これは御社の製品の製造に紛争金属が必要であり、御社が製造または製造委託契約を結んでいる完成品に紛争金属が含まれていることの申告です。「Yes(はい)」又は「No(いいえ)」で必ず回答してください。注意:「Yes(はい)」となる場合は、完成品に紛争鉱物が含有されていなければなりません。

比べてみますと、質問2では含有が必要との注意がありますが、質問1にはないことからすると、質問1でYESと答えるためには、製造している製品や部材に、タンタル、錫、金、タングステンの含有は必須でないことが分かります。そうなると、例えば、タンタル、錫、金、タングステンを触媒で使ったけれども、その結果製造した製品・部材には含まれていない場合は、質問1でYES、質問2でNOと回答することができることになります。


とすると、質問1ができたことで、各会社は、調査の対象をタンタル、錫、金、タングステン含有の有無で絞ることはできないということが明確になったということですね。私の会社では、製品を構成する部材のタンタル、錫、金、タングステン含有量のデータがあるので、それでサプライヤーを絞って照会していたのですが、そういうラクは許しませんということになりそうです。


会計事務所の先生に照会してみましたが、検討中とのことで、結構やばいかもしれません。歓迎すべきシナリオは、新バージョンの質問1、質問2が、旧バージョン質問1に戻ること。テンプレートというわりには、2週間の短期間で新バージョンが出たりした前歴もありますから、混乱を早急に鎮静化するバージョンアップを期待します。


*2014/4/29 追記
 某部品業界様の新バージョンの解説がリリースされてましたので、確認したところ、やはり4鉱物を触媒で使ったが、最終的に製造された製品、部材に4鉱物が含まれていない場合も、調査の対象になる旨明記されてました。旧バージョンの解説にはその旨の記載はなかったですし、もうヤバいの確定ですね。。。。