ピンチをチャンスにするアイディア

ピンチをチャンスにする巴投げのようなアイディアを見つけました。新党大地代表の鈴木宗男氏のブログ「ムネオ日記」(2014年4月20日分)です。

ウクライナ問題をチャンスととらえ、アメリカの言いなり、アメリカに引きずられていると、受け止められない外交が求められる。
EUアメリカが、クリミアでのロシアの動きを戦後の国際秩序である領土不拡散に反すると言っているが、ロシアは領土拡大の意志は全くないといっている。
「国際社会が領土拡大というのなら、北方領土は日本に戻しましょう。これが何よりの領土不拡散の証です」とロシアに言わせるような外交をやって欲しいものである。
http://www.daichi.gr.jp/diary/diary_2014_04.html

ただただ感心してしまうのですが、折角なので、こういう素敵なアイディアが浮かぶロジックを解明してみます。

順番は、まずこの問題に関する私の頭の中の理解と考えについて、次に鈴木氏のアイディアとのギャップを明確にし、最後に纏め、という3ステップで行きます。


1.私の頭の中


(事実)

(1)北方領土問題解決のために日露間で準備が着々と進んでいる中、ウクライナ問題が発生した。
(2)米国・EUはロシアを批判している。


(問題点の整理)

(1)北方領土問題解決だけを考えれば、日露間で協議を継続するのが望ましい。
(2)他方で、協議を継続すれば、米国・EUとの関係が悪化し、例えば中国が尖閣諸島に侵攻してきた際に、米国が助けてくれないという懸念がある。また、ロシアの一連の行為がウクライナの領土を縮小するものであるという解釈をとれば、日露間で協議を継続することはロシアの一連の行為を許容することとなり、中国による尖閣諸島への一連の干渉を勢いづかせる懸念がある。


(考え)

(1)ロシアが、米国・EUに譲歩する余地があるのであれば、日本が米国・EUとロシアの仲介をすることが考えられる。しかし、佐藤優氏の著作によれば、ソ連・ロシアの領土に関するスタンスは、自らの領土の周りに緩衝地帯を設けないと安心できないというもの。そこから推論すると、これまで緩衝地帯としていたウクライナが緩衝地帯でなくなったことは、ロシアとして許容しがたく、新たな緩衝地帯を設ける方向で動くであろう。その意味で、ロシアが米国・EUに譲歩する余地は少なそう。
(2)譲歩する余地が少ないのであれば、リスクを比較して、リスクの小さい方を選択せざるをえない。尖閣に侵攻されるリスクは、実際に武力衝突がおきたり、爆弾が日本に飛んできたり、日常生活やビジネスへの支障が甚大。他方で、北方領土問題が解決しなかったとしても、戦後からずっと未解決にて、さしあたり支障が生じることは考えにくい。とすると、尖閣に侵攻されるリスクを優先せざるを得ない。
(3)以上より、ほとぼりが冷めるまで日露間協議を断念せざるをえないのではないか。

2.鈴木氏のアイディアとのギャップ

本当のギャップは、当事者意識の強弱、真剣に考えているか否か、頭の良し悪しだったりするのだとは思いますが、再現可能という観点から(汗)、テクニック的な観点に絞ります。


ギャップの1つめは、上の考えの(2)の次の箇所。

譲歩する余地が少ないのであれば、リスクを比較して、リスクの小さい方を選択せざるをえない。


短絡的に二者択一問題にしてしまった私。それに対し、鈴木氏は、二者択一問題にしていません。
例えるなら、私は1次方程式、鈴木氏は連立方程式。スケールが違いすぎます。


ギャップの2つ目は、上の考えの(1)の次の箇所

ロシアが、米国・EUに譲歩する余地があるのであれば、日本が米国・EUとロシアの仲介をすることが考えられる。


無意識に、ロシアの譲歩の有無という問題に帰結してしまう視野の狭い私。それに対し、鈴木氏のアイディアは、二者択一どころか、北方領土解決を足掛かりに、米国・EUを譲歩させるもの。ロシアの譲歩の有無は米国・EUの譲歩の有無と裏返しであることを前提に問題を考察されていることが伺えます。



ギャップの3つ目は、もう端的なんですが、鈴木氏の次の記述。

「国際社会が領土拡大というのなら、北方領土は日本に戻しましょう。これが何よりの領土不拡散の証です」とロシアに言わせるような外交をやって欲しいものである。


ウクライナ問題も北方領土問題も「ロシアが抱えている領土問題」という点で括って考察されていることが伺えます。言わずもがななのかもしれませんが、私はこのように括ることができませんでした。


ギャップの4つ目は、鈴木氏の次の記述。

ロシアは領土拡大の意志は全くないといっている。


このロシア側の声明については「そんなわけないだろ!」といった風情で、無意識ながら無視していた気がします。仮にこの声明を「建前」とするならば(あくまで仮にですよ。)、「本音」ばかりみていた私。何を本音とし建て前とするかはさておき、本音と建前の使い分けを意識するということでしょうか。自分自身の問題でしたら、本音と建前の使い分けは意識的にできますが、他者の本音や建前は、どちらかだけを見ることになりがち。相手の立場になって、否、相手になりきって考えることが必要なんでしょうね。


3.まとめ

まだ抽象化が足りない気がしますが(特に(1))、さしあたりのまとめは次の通り。(2)(3)(4)はすぐにでも使えそうです。

 (1)安易に二者択一問題にしない。連立方程式的に考えられないか考えてみる。
 (2)表面がダメだったら、逆・裏から考えてみる。
 (3)一見別と思われる問題でも、共通点がないか考えてみる。
 (4)建前だけみてないか、本音だけみてないか省みる。
 (5)相手になりきって考えてみる。


B to Bのメーカーですと、本来的な義務である製品の品質以外のところで、それはそれは面倒な要求を受けることが多いです。私の頭の中にあるのはお金や手間のかかるCSR関係の要求なんですが、原価や販売管理費が余計にかかるという意味ではピンチな要求です。そんなピンチをチャンスに変えられないか、いつも考えていますが、鈴木氏の上のようなアイディアを思い浮かべながら、さらに思考を深めていきたいです。

調査範囲拡大? 紛争鉱物調査テンプレートver.3.00

EICC等の出しているConflict Minerals Reporting Templateの新バージョン3.00が4月9日に出ました。
これまで最新版だった2.03a の改訂日が昨年の7月25日ですから、約8ヶ月ぶりの更新です。


おおまかに、会社情報、デューデリジェンスに関する質問、体制に関する質問、精錬業者識別番号に変更がありましたが、本稿では、実務的に大きなインパクトがありそうなデューデリジェンスに関する質問の1)と2)に絞ります。



結論を先取りすれば、旧バージョンの質問1が、新バージョンの質問1と質問2に分かれた印象で、新バージョンの質問1のせいで、調査範囲がシャレにならないくらい広がると解釈する余地がある感じです。


旧バージョンの質問1は次の通り。


以下の金属(タンタル、錫、金、タングステン)は御社が製造又は製造契約を締結している製品の機能性又は生産に必要ですか?

新バージョンの質問1が新たに追加され、次のような質問が追加されました。

紛争金属は御社の製品に意図的に使用していますか?

また、新バージョン質問2は次のようになり、旧バージョンの質問1から、<機能性又は生産に必要>から「生産に必要であり、かつ、含有」しているか否かに変更されました。

紛争金属は御社の製品の生産に必要であり、御社が製造又は製造委託している完成品に含有していますか?

このような変更の背景がいまいちわかりませんし、質問1が追加された意義が良くわかりません。


新バージョンの質問1の”Instructions”は次のとおりです。

1.これは、御社又は御社のサプライチェーンが紛争金属を意図的に製品に加えているか否かの申告です。紛争金属ごとに「Yes(はい)」又は「No(いいえ)」で回答してください。この質問への回答は必須です。「No(いいえ)」という回答に対して、コメント欄に具体的な内容の記入を要求する企業もあります。


 新バージョン質問2の”Instructions”は次のとおりです。

2.これは御社の製品の製造に紛争金属が必要であり、御社が製造または製造委託契約を結んでいる完成品に紛争金属が含まれていることの申告です。「Yes(はい)」又は「No(いいえ)」で必ず回答してください。注意:「Yes(はい)」となる場合は、完成品に紛争鉱物が含有されていなければなりません。

比べてみますと、質問2では含有が必要との注意がありますが、質問1にはないことからすると、質問1でYESと答えるためには、製造している製品や部材に、タンタル、錫、金、タングステンの含有は必須でないことが分かります。そうなると、例えば、タンタル、錫、金、タングステンを触媒で使ったけれども、その結果製造した製品・部材には含まれていない場合は、質問1でYES、質問2でNOと回答することができることになります。


とすると、質問1ができたことで、各会社は、調査の対象をタンタル、錫、金、タングステン含有の有無で絞ることはできないということが明確になったということですね。私の会社では、製品を構成する部材のタンタル、錫、金、タングステン含有量のデータがあるので、それでサプライヤーを絞って照会していたのですが、そういうラクは許しませんということになりそうです。


会計事務所の先生に照会してみましたが、検討中とのことで、結構やばいかもしれません。歓迎すべきシナリオは、新バージョンの質問1、質問2が、旧バージョン質問1に戻ること。テンプレートというわりには、2週間の短期間で新バージョンが出たりした前歴もありますから、混乱を早急に鎮静化するバージョンアップを期待します。


*2014/4/29 追記
 某部品業界様の新バージョンの解説がリリースされてましたので、確認したところ、やはり4鉱物を触媒で使ったが、最終的に製造された製品、部材に4鉱物が含まれていない場合も、調査の対象になる旨明記されてました。旧バージョンの解説にはその旨の記載はなかったですし、もうヤバいの確定ですね。。。。

北米ヨリCSRノ監査アレバ

国内ノ車屋サンヨリ依頼ガアレバ躊躇シツツモサプライヤノ情報ヲワケテヤリ
世界中カラ紛争鉱物ノ依頼ガアレバ製品単位ニテ詳細ナル情報ヲワケテヤリ
北米ヨリCSRノ監査アレバコワガラナクテイイトイイ
粉砕されたとです。。。。


納入する製品に関する要求ならばまだわかる。債務の本旨だもの。
ただ、製品とは直接の関係ない事項についてcorrective action plan とか言われるのは釈然としない。
例えば?
懲戒処分の減給はおかしいから対象から外すだけでなく、利用している派遣会社の就業規則から減給を外せとかぁ。
人身売買がトピカルだから就業規則に人身販売禁止とか書けとかぁ。
国内法ではどう規定されていようが、週●時間以上働いたら改善を求めるからなぁとか。
避難訓練の当日休んだ人にも避難訓練しないなんて信じられないわぁとか。


極めて労働条件が悪い国を何とかしようとして、実態として別に問題ない国の揚げ足を取るのはいかがなものかと。
各国の労働法令はもちろんグローバルスタンダードをもとにそれぞれの国の実情やらにあわせて法令なり運用なりが決められている。
それをもとに心ある会社ならば法令はやぶらないようにねと、対応しているんでしょう。
日本だけでなく欧州の様々な国の労務トラブルに関与してきた私からすれば、労務管理の実務運用は国それぞれにせざるを得ない。
そんな労務管理をワールドワイドに統一しようとか考えている人たちが北米というか米国にいます。


意外とそんな要求をしている会社は、その下請けやら孫請けやらが、人が死ぬレベルの労務管理をしてたりして、やりたいことはわかるんですけどね、でも、労務管理まで介入するのかいな。正しいと思っていることを、押し付けるなんとも米国らしいといえば米国らしいけど、その先には形骸化しかない。可能な限り書面をそろえて対応するということ。


こういったことへの対応は本来的債務ではないはず。現地の法令に違反しているものならともかく、現地の法令に違反していないが顧客の要求にそぐわない労務関係の要求について改善を求めるとかどうするんでしょうね。大きな会社は、労働やら安全衛生やらの規格の認証を受けているでしょう。これは推測ですが、その認証でも、国内法令を順守していればOKなはずで認証取っているのに北米の顧客監査で指摘事項てんこ盛りなんじゃないかと。ぶっちゃけ先方の言ってることすべて聞いたら、余裕で生産間に合わないですし、労働時間が短いというのも国によっては金が稼げないからそんな会社辞めるわとなりかねません。法令さえ守れば、あとはどうするかは会社の判断という裁量をものすごく狭める干渉だと思います。お客様がいる以上債務の本旨にかかわることは誠実に対応すべきですが、それ以外の付随的債務にも誠実に対応してどうなるんだろう。もう、海外に進出しなければどうしようもないという風潮の中で、進出した会社は付随的債務にあくせくしつつ、進出しない/進出できない会社は自滅するなんて悲劇ですね。


とはいえ、そういったことに対応することで、従業員のモチベーションがアップするなら、それはそれで考慮に値するんだと思います。
でも、先進国で、人身売買禁止という方針があって、この会社に骨をうずめますという人がいるだろうか。避難訓練の日に休んだけど、自分のために別途避難訓練をしてくれる会社サイコーと思う人がいるだろうか。


いろいろ釈然としない思いを抱えつつ、反抗は難しいので、まずは魂の入っていない仏様をつくる(=マネジメントシステム)ことから始めるしかないんでしょうね。仏さえあればあとで魂を入れることはできます。そんな日が来ることを信じながら、北米の某業界団体の100個以上の、労働、安全衛生、環境、倫理、マネジメントシステムからなる監査要求を和訳する私。

ニッポンの夏コンゴの夏

ついうっかりしているうちに、5か月以上更新していないことに気が付きました。


理由は、昨年の12月に次女が生まれた、将棋にはまってこれまでブログ書く時間にコンピュータ将棋と対戦してた、そ〜し〜て、仕事が忙しかったからです。


さて、仕事が忙しかったのはなぜか。まあ、4月〜6月は株主総会シーズンですからね。普通に忙しい。それを差し引いても、忙しかったです。それは、紛争鉱物調査に思いっきり巻き込まれたからです。


紛争鉱物調査とは何か。なぜ巻き込まれたのか。


乱暴にまとめると、米国上場企業+αに非常にめんどうな義務が課されたんです。具体的には、「自社で製造している製品がコンゴ共和国やその周辺国の金、タンタル、スズ、タングステンを使っていないか合理的な調査を行い米国証券委員会に報告する」義務が課されました。


製造している製品と書きましたが、製品を構成する部品や材料についても調査をしなければなりません。
例えば、パソコンメーカーなら、自社のパソコンを構成する全ての部品に、金、タンタル、スズ、タングステンが含まれているか確認する。
さらに、部品のサプライヤーに原産地というか鉱山はどこと聞いて、部品のサプライヤーはそのサプライヤーに聞いて(以下略)という作業
が延々繰り返される気が遠くなるような営み。


そんなわけで、米国に上場していない企業でも、それなりに海外に進出している企業ならば、直接のお客様でなくても、お客様のお客様とか、
どこかのお客様に米国上場企業がいるでしょう。しがない日本のメーカーでもこの法律に巻き込まれ、しがない法務担当(おれおれ)もこの法律に巻き込まれたわけです。


ん〜とはいえ、法務担当だと、普通は、法律の概要を本来担当すべき購買部門やCSR部門へ説明しつつ、イレギュラーな対応の際にちょこっと出てくる程度だと思います。まあ、このあたり、深く突っ込むと、会社批判になりますので、辞めて、もとい、止めておきますが、まあ、巻き込まれっぷりが悲惨です。


どの会社でも、紛争鉱物調査は、おおまかに次のような感じの業務に分類できるはずです(先進的な企業はこの限りでない)。(1)サプライヤーへの照会、(2)サプライヤーからの回答のチェックとサプライヤーへの突込み、(3)サプライヤーからの回答をDBに登録、(4)製品とサプライヤーの紐付け、(5)お客様への回答、(6)お客様からの(時として、否、常にウザい)照会への対応。その中で、(1)と(4)以外、私独りでやってます。今年の4月以降、(2)、(3)は100件強、(5)は170件、(6)は20件くらいですかね。素性がばれないように、ざっくりと会社の概要をいいますと、売上1000億円未満、従業員5000人未満な会社ですが、製品を構成する部材は比較的単純なので、独りでできているのかもしれません。


まあ、普通の会社であれば独りでやらせないので(苦笑)話しのネタとしては(法務パーソンの仕事としては)面白いでしょうし、何かしら記録しておくことで、現在対応に大わらわな方に少しでもお役にたてることを願いつつ、そして(これが大事)、ご無沙汰なブログのネタとして、しばらく、これまでの経緯を時系列で書きつつ、テーマ別に、紛争鉱物についてグダグダ書いていこうかなと。

黙祷もよいけれど、やるなら訓練でしょう。

今日で東日本大震災から2年。


今日の新聞には、黙とうをお願いする政府広報が載ってます。私の所属する会社でも、業界団体を通じて政府から黙とうの指示(お願い)が来ました。


法律に多少の素養がある人にとっては、国からこのような行動をお願いというか指示されるのは嫌な感じがします。黙とうをやるべきではないと言っているのではなく、言われたからやるものではないし、国がとやかく言うべきではないという意味ですので、誤解なさらぬよう。


国は、個人の内面に踏み込むべきではないのが建前です。思想良心の自由なんていいますね。
今回の黙とうの働きかけは、特定の思想を強制するものではないでしょうが、多少は人の内面に入り込む行為でしょう。


政府広報などで呼びかけはよいにしても、昨年は丁度日曜日だったからもしれませんが、今年は、業界団体を通じての指示(まあ、正確には呼びかけでしょうが)があり、現在の政権のちょいと右な感じをかぎ取ってしまいました。


折角何か強制するのであれば、震災を想定した訓練をやさしく指示し、国なり地方公共団体がバックアップした方が、震災の経験を明日に活かすことができるのではと思います。
例えば、企業に対しては、地震が起き、インフラなどが停止したことを想定した場合の事業継続を想定した訓練をやってもらう。バックアップの例としては、メーカーの場合、規模的に厳しい企業なら、競合他社だと機密情報とかありますでしょうから、お客様に援助を働きかける(もちろん優しく)。まあそういう訓練やったら、法人税減税というのでもよいですよね。


念のため、定義を明らかにしておきます。通常の避難訓練は、地震が起きたりした場合に、火の元を気を付けるとか、机の下に潜るとかってな訓練で、主として人命救助が目的となります。
事業継続を想定した避難訓練ってのは、これを超えて、例えば、自社のとある工場が被災して、生産設備が壊れちゃった場合に、別の工場にスムーズに生産移管して、自社製品のお客様への供給が途絶えないようにする訓練を指します。


相当規模が大きな会社や先進的な企業でない限り、人命を救うことを想定した避難訓練はやっても、事業継続を踏まえた訓練はやっていないところが多いのではないでしょうか。分かっているけど何をしたらよいのかわからないとか、そんな余裕がないとかで。


私の所属している会社はB to Bのメーカーということがあるのかもしれませんが、海外や国内の車系のお客様から事業継続を踏まえた訓練をしているのかというお問い合わせが多いこと多いこと。最近、契約書審査は別の人に任せて、アンケート対応ばかりしてます。それはさておき、自社では、人命救助を目的とした避難訓練はしてますが、事業継続を踏まえた訓練はそんなにしてません。やっていないというと、お客様がブーブーうるさいので、まあ訓練つながりで、例えば5段階評価で、3とか4とかの回答をすることが多いです(苦しい)。訓練してっていうなら、単価上げてよなんて思います。


なので、毎年、東日本大震災の日に、国なり地方公共団体が、企業に、事業継続を踏まえた訓練をお願いし、バックアップをする。これこそ、国なり地方公共団体が果たす役割ではないでしょうか。助かる企業は多いと思います。


東日本大震災をきっかけに、日本の地震活動が活発的になったとか、2030年代には三南海地震が確実に起きるとか聞きますね。特に後者の損害額や死亡推定数は、関東大震災東日本大震災の比ではないなんて。


これが正しいならば、まだ震災の記憶の生々しいうちに、こういう訓練をお願いし、国などがバックアップをすることで、来るべき地震が来た際は、企業の損害額の減少、復興予算の減少、法人税が減らなくなるといった効果が考えられますが、ダメですかね。。。。。

【本】瀧川英雄『スキルアップのための企業法務のセオリー』

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

後進の育成を担当されている法務パーソン必読。
と同時に、自らの足りないところを明確に認識するチェックリストとしても有用。
感覚的には、この本に書いてあることが5割〜6割できれば、かなり優秀な法務パーソンでしょう。


自分の中で明確に整理され言語化されている箇所には「やっぱりそうだよね!」と激しく同意しながら、無意識レベルで大事と思っていたことに触れられている箇所には「そうそう!これ大事だよね!」とひざを打ちながら、楽しく読めました。もちろん自分の足りないところを抉られつつですが。


一番心に残った箇所は、22頁のこの図。



これは法務パーソンに限らず、スキルアップしやすい人材の要件をもれなく書いてあるといっても過言ではありません。
育成に苦労した後進たちの顔と、後進たちの不足している要件が、脳裏を去来します。
「しつこさ」って、普通はネガチブな意味で使われますので、それがポジティブに使われていることに虚を突かれました。そして、しつこいのは良いことなのねと救われた気分になりました。


この「しつこさ」×「スピード」×「学習能力」の方程式の大前提が、「仕事を通じて自ら成長しようという向上心」と筆者は述べています。
激しく同意。


個人的には、「向上心」と「しつこさ」が、成長の大きな土台になる気がします。しつこさのない向上心は、青い鳥みたいに理想は心にあるけどみたいな感じになりがち。向上心のないしつこさは、ただ自分の意見に固執するだけの比較的困った方になりがち。頑固と紙一重かもしれませんね。両方ないと(以下略)。


向上心としつこさがあれば、仕事で学んだことを応用できるようにするためにはどうしたらよいかとしつこく考えますし、スピードは先天的なものかもしれません。私はスピードがないので苦労してますが、向上心としつこさと学習能力で、一定程度はカバーできる気がします。


話しはやや飛躍しますが、ここで挙げられている4つの要素は、例えば採用面接の際に、その人の伸びしろを推測する際に有用と思い至りました。


私の所属している会社では、法務のスキルがすごい人は多くの場合年収面で折り合いがつかないので、現実的にはスキルは多少なくても伸びしろのある人を採用するのが良いと思っています。


と、抽象的に考えてましたが、伸びしろのある人か否かの判断はこれまで曖昧でした。この本を読んで、4つの要素の有無を確認する質問をすれば、伸びしろのある人か否かを的確に推測することができそうです。


とはいえ、4つの要素を満たしている人も折り合いがつかない可能性が高いかもしれません。
優先順位をつけるなら、私でしたら、「向上心」「しつこさ」>「学習能力」>「スピード」という優先順位をつけますね。


余談ですが、私の上司は、人材の判断基準が「学歴」と「スピード」で、私と衝突すること衝突すること。うん、世の中うまくいかないですね。

「社外取締役ガイドライン」のちょっとずれた使い方

日弁連が2月14日に「社外取締役ガイドライン」を出しましたね。
簡単に言うと、社外取締役が就任から退任まで、どのような役割を果たし、どのような行動をとればよいのかについてのガイドラインです。


http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/guideline_130214.pdf


個人的には、取締役の善管注意義務の内容がコンパクトにまとまっていて、役員向けの社内研修資料作成に役に立つなあと思いました。
ガイドラインの「はじめに」に、法務パーソンには、社外取締役活用のヒントに活用してほしいなんて書いてありましたので、本来の目的からは逸脱した利用方法ですが。。。


取締役の義務を正確に・わかりやすく・もれなく整理した文献って意外とないので、役員向けの研修で結構苦慮します。


受講者は、善管注意義務、忠実義務、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務といった言葉だけご存知で、中身はさほど詳しくない方々。
要するに新聞は読んでるけど、法務担当役員ではないので詳しく知らないよってな感じです。


そんな方々に、バラバラと個々の義務を説明しても、わかりにくいことこの上なし。
頭に入らないですし、平板なので、寝てしまいます。
なので、これらの義務を何らかの形で整理して、流れができると、多少は聞いてくださります。


いろいろな整理の仕方があると思いますが、私はいろいろな義務を次のような感じで大きく2つに分けています。


レイヤー1が、善管注意義務・忠実義務、法令等遵守義務ですね。簡単に言うと、法令の範囲内で最善を尽くせと。
レイヤー2が、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務など。


その上で、レイヤー2の義務をレイヤー1の2つのいずれかで整理できると、話に流れができてわかりやすくなります。
ただ、これが難しい。
例えば、内部統制システム構築義務は、構築しなかったら、法令等遵守義務違反になると思いますが、システムを構築したけど実効性がなかったという場合は、善管注意義務違反でしょう。敢えて整理するなら、構築していることを前提に、善管注意義務に位置づけます。
監視義務は、善管注意義務の一つでしょう。このガイドブックにも明確に書いてあります。
利益相反取引の禁止や利益供与は、善管注意義務と決めつけるのはややためらいがありますね。法令等遵守義務ですかね。


まあ、こんな感じで、レイヤー2の義務を、レイヤー1の義務に対応させる形で整理するのは、困難・不可能なんですよね。


なので、研修では、


1.取締役の義務は、抽象的にいうと、法令の範囲内で最善を尽くせということで、これを善管注意義務・忠実義務、法令等遵守義務なんて言います。
2.これを具体的にすると、利益相反取引、利益供与、競業取引、内部統制システム構築義務、監視義務等があり、具体的には・・・


といった感じで、現状ではレイヤー1とレイヤー2を紐づけずに説明してます。もう少しわかりやすい整理ができるとよいのですが。


ガイドラインでは、善管注意義務がメインに書かれていて、私がもやもやしていることへの回答はありませんが、監視義務等を全うするためのチェックポイントが結構細かく書かれています。チェックポイントを見逃す=義務違反ですから、このチェックポイント自体を監視義務等の生々しい具体例として利用できますね。今度役員に研修するときにこの内容を盛り込んでみます。