【本】瀧川英雄『スキルアップのための企業法務のセオリー』

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

後進の育成を担当されている法務パーソン必読。
と同時に、自らの足りないところを明確に認識するチェックリストとしても有用。
感覚的には、この本に書いてあることが5割〜6割できれば、かなり優秀な法務パーソンでしょう。


自分の中で明確に整理され言語化されている箇所には「やっぱりそうだよね!」と激しく同意しながら、無意識レベルで大事と思っていたことに触れられている箇所には「そうそう!これ大事だよね!」とひざを打ちながら、楽しく読めました。もちろん自分の足りないところを抉られつつですが。


一番心に残った箇所は、22頁のこの図。



これは法務パーソンに限らず、スキルアップしやすい人材の要件をもれなく書いてあるといっても過言ではありません。
育成に苦労した後進たちの顔と、後進たちの不足している要件が、脳裏を去来します。
「しつこさ」って、普通はネガチブな意味で使われますので、それがポジティブに使われていることに虚を突かれました。そして、しつこいのは良いことなのねと救われた気分になりました。


この「しつこさ」×「スピード」×「学習能力」の方程式の大前提が、「仕事を通じて自ら成長しようという向上心」と筆者は述べています。
激しく同意。


個人的には、「向上心」と「しつこさ」が、成長の大きな土台になる気がします。しつこさのない向上心は、青い鳥みたいに理想は心にあるけどみたいな感じになりがち。向上心のないしつこさは、ただ自分の意見に固執するだけの比較的困った方になりがち。頑固と紙一重かもしれませんね。両方ないと(以下略)。


向上心としつこさがあれば、仕事で学んだことを応用できるようにするためにはどうしたらよいかとしつこく考えますし、スピードは先天的なものかもしれません。私はスピードがないので苦労してますが、向上心としつこさと学習能力で、一定程度はカバーできる気がします。


話しはやや飛躍しますが、ここで挙げられている4つの要素は、例えば採用面接の際に、その人の伸びしろを推測する際に有用と思い至りました。


私の所属している会社では、法務のスキルがすごい人は多くの場合年収面で折り合いがつかないので、現実的にはスキルは多少なくても伸びしろのある人を採用するのが良いと思っています。


と、抽象的に考えてましたが、伸びしろのある人か否かの判断はこれまで曖昧でした。この本を読んで、4つの要素の有無を確認する質問をすれば、伸びしろのある人か否かを的確に推測することができそうです。


とはいえ、4つの要素を満たしている人も折り合いがつかない可能性が高いかもしれません。
優先順位をつけるなら、私でしたら、「向上心」「しつこさ」>「学習能力」>「スピード」という優先順位をつけますね。


余談ですが、私の上司は、人材の判断基準が「学歴」と「スピード」で、私と衝突すること衝突すること。うん、世の中うまくいかないですね。