【本】津田大介『情報の呼吸法』

情報の呼吸法 (アイデアインク)

情報の呼吸法 (アイデアインク)

この本のテーマは「脅し」です。



1.一つ目は、ソーシャルメディアソーシャルキャピタルを使いこなせない人はやばいよという脅し。

 ≪マスメディアしか見ていない人と、ソーシャルメディアも使いこなしている人との間には、情報に関して圧倒的な差があります。≫(46頁)
 ≪一つだけ確実に言えるのは、情報格差が生死に関連するような状況を今回の震災と原発事故がもたらしたということなのです。≫(47頁)

東日本大震災のときは、ツイッターの存在は知っていたものの、そのポテンシャルには気が付かず、TVの前に張り付いてぐったりしてました。



ツイッターのポテンシャルに気が付いたのは、昨年秋。関東地方に台風が直撃し、電車が止まり、電車の再開情報を会社で検索している時でした。インターネットのニュースは更新頻度が遅かったのに対し、ツイッターでは「●●駅で止まっているけど車掌さんがこんなことを言っている」とか、「●●駅では下り電車再開」などの情報が日々刻々と投稿されているのを見て、驚きました。とりあえず、iPhoneにアプリをインストールして、会社の近くのラーメン屋でビール片手にツイッターを眺めて時間をつぶし、駅で電車を待つことなく比較的スムーズに帰宅できました。

その後は、電車が止まった時に眺める程度で、登録するまでには至らず。
2ちゃんねるを見るのは好きだけど、書くのはちょっとなあという気持ちがツイッターに対してもあったため。また、人見知りで、面倒くさがりだったから。



そんな私でしたが、この本に脅され(笑)、ツイッターをよくやっている同僚に背中を押してもらい、とりあえず、2012年2月の終わりに、ツイッターに登録。情報量、そのリアルタイムさに圧倒されました。日経新聞くらいでしかニュースを把握していなかったので、当然といえば当然なんですが。。



見知らぬ人に声をかけることはできていませんが、この本に書いてあることを大いに参考にして、このブログでぐちぐち考えていることを濃縮するような形で、まずはツイッターで情報発信していけたらなあと思っています。



2.二つ目は、旧来の政治メディアなどへの脅し。

≪マスメディアとは違った「新しい政治メディア」をいま作れないか≫(114頁)
≪この政策はこのような意思決定プロセスを経て決まったということを「見える化」することで、政治の状況を変えられるのではないか≫(115頁)

こんなメディアができたらどうなるのだろうと、ワクワクし、つい妄想にふけってしまいます。
(1)マスメディアが報道の仕方を変えてくるであろうことは本書でも言及されていますが、報道の仕方を変えない会社も絶対あると思います。その会社がどんな会社とか、最終的にどんな末路をたどるのかとか。
(2)政党の存在意義・位置づけも変わってくるかもしれません。政党の機能の一つとして建前上は、≪国民の多種・多様な分散的個別意思や利害を集約・統合し、世論形成の指導的役割を果たす≫理解しやすい政治・経済(改訂版)(98頁)が挙げられます。このような機能を果たしている日本の政党はあまりないようにも思われますが、「新しい政治メディア」の出現で、政党って必要なのかという議論が表面化してくるでしょうし、政策の違いが政党の違いという本来あるべき姿に変わるかもしれませんね。
(3)政策決定プロセスが見える化されれば、有権者は合理的な判断を(投票という形で)すると考えるのが素直です。しかし、果たしてそうなるでしょうか。十分な情報があるにもかかわらずそれを生かさずに非合理的な判断をしてしまうことは歴史が多く教えてくれるところです。今の日本では、有権者がどれくらい合理的な判断をできるのか、自戒も込めつつ、単純に興味があります。



会社法務という仕事柄、リスク要因から考えてしまうのですが、政策決定プロセスを見せたくない人たち(あえてぼかす)の大人げない妨害があるかなあとは思います。著者の「ソーシャルキャピタル」を中心とするコミュニティの力で妨害に対抗し、是非実現して欲しいものです。