【本】松本幸夫『納得しないと動かない症候群』

他者の言動を変えさせるのは生半可な覚悟ではできない。他者への愛とそれに勝る自分への愛が必要。

27年以上企業の新人研修をしている著者による「最近の若者はちとおかしい、このままでは日本がだめになる」という憂国の思いが募りに募って、一冊の本に。


著者は、これを「納得しないと動かない症候群」と呼ぶ。例えば

(1)研修の合間の休憩ですら、休憩をする理由をこと細かく説明しないと休憩しない若者。
(2)自分が納得できない話はレベルが低いと判断する若者。
(3)結論、ノウハウを知りたがり、人生訓には無反応な若者。
(4)相づちを打たない若者。
(5)世話話をしない若者。
(6)考えない若者。
(7)研修を受けても、現場でどうやるのかを聞く若者。


著者は、ここでいう「若者」を平成生まれとしている。
わが社にも平成生まれのピチピチしたのがおります。個人的にこれは耐えられんと思ったのが、「(2)自分が納得できない話はレベルが低いと判断する若者」ですが、この超上から目線君には遭遇してないです。幸いにして。
6〜7年前でしょうか、シュガー社員とかいう言葉がはやりましたな。平成生まれでなくても、上に当てはまる方はシュガー世代(?)に多くいるような気がします。
私は、油断してるとあっという間に40になってしまうお年頃ですが、上の7つのうち、「(5)世話話をしない若者」には確実にあてはまります。
著者が1958年生まれで、平成生まれだと1989年以降の生まれ。著者が違和感を端的に感じているのは、1989年生まれ以降としても、徐々に上のような特質を持つ若者が増えているというのが、個人的な実感。


さて、そんな「納得しないと動かない」若者に対する、著者の処方箋にドン引きしたです。ハイ。


まずは仕事の頼み方。

全体像を示せ、そしてその仕事をしてもらうメリットと具体的なやり方をクドいくらいに示しつつ、そんなこと知ってるよとかプライドを傷つけないように頼む。

うん。ドン引き。ここまでやらなきゃダメなやつはさっさと辞めちまえとまず思いました。多くの法務パーソンが直面するであろう、法律のことはチンプンカンプンだけど、プライドが非常に高く、社内での影響力がやたら強い上司(役員)へ上申する際の注意点みたいですなあ(苦笑)。でも、これくらいやらないとへそを曲げる若い人は確実にいますね。やってもできない若い人もたくさんいる(微笑)。


次に、誉め方。

誉めた理由を示す、誰も指摘しない長所を誉める、第三者から誉めが本人に伝わるよう仕組む。

うん。そもそも誉められないと仕事やらないという、精神構造が気に食わない。誰も指摘しない長所を誉めるなんて、対象者への愛がないと難しいところ、この種の輩は、愛=ある種尊敬を感じるような何かは全く持ってないのが個人的な感想。


処方箋に書かれていることを遂行するには、対象者への愛と、愛が多少足りなくても部下を何が何でも動かしてパフォーマンスを上げるとか、自らの新しい可能性へのチャレンジといった、自分への愛がないと難しい。少し噛み砕くと、結果を出したり、自分が成長するためには、自分のプライドなんぞかなぐり捨てよってことですかね。


自分は怒られて育ってきたとか、抽象的な指示でも自分なりに仕事の全体像や意義やらを足りないなりに考えてきたとか、自分の個人的な経験を押し付けるタイプの教育は、役に立たなくなっているんでしょうね。。


よくビジネス本に、過去の成功体験にとらわれるななんて、書いてありますが、それに類比的な話かもしれませんね。


話が錯綜したので整理すると、「懇切丁寧に手間暇かけないと自分を変えられない人に手間暇かけるのは無駄だよね」という意見と、人は無限の可能性を持っているのでいかようにも導けるという意見の間で、どんなバランスをとるのかという問題です。


私は前者に相当重きを置いていますが、バランスを取る地点を後者よりにした方がよいのかなとこの本を読んで思いました。バランスを変えるのは、指導する人への愛と、もっともっと成長したいという自分への愛が必要だろうと思いますが、そんな愛が私にあるのかしら、と考えさせられました。