新入社員の皆さんへ 「良い仕事観を身体に染み込ませよう」

先週から、わが社にも、新入社員が入社してきました。



隣の課の人より「今日で新入社員研修が終わり、明日から新入社員を受け入れるんだけど、何話しました?」と聞かれたので、2年ほど前に新入社員を受け入れたときの資料を紐解いて、お送りしました。久しぶりに自分の作成した資料を読んで、考えに考えて資料を作成した当時の自分を思い出し、もったいないので(笑)、ブログに掲載しとこうかなと思いました。



私はベシャリでアドリブがきかないので、ワードで原稿を作成してから、ポイントをパワポにまとめて、ワードを読み上げる形で、プレゼンするスタイルです。以下は、ワードの原稿を、明らかに個人情報保護法著作権法に抵触しそうな箇所のみ、修正したものです。



初めて会社で働く貴方にお伝えしたいことは、<良い仕事観を体に染み込ませよう>ということです。


最初の会社、職場、上司、同僚、仕事などが、これからの長い会社員人生において、良くも悪くも基準になります。生まれたてのヒヨコが最初に見たものをお母さんと思うのと同じですね。私は、転職してからこのことを痛切に感じました。


その意味では、会社がどんなものか、仕事がどんなものかよくわからないうちに、よい仕事観を染み込ませておくのが賢明です。


徒然草で、仁和寺の坊さんが、岩清水八幡宮に詣でようとして、岩清水八幡宮のある山のふもとにある極楽寺を岩清水八幡宮だと勘違いして、ありがたやありがたやという話がありましたが、「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」ですね。極楽寺石清水八幡宮は20キロも離れているようですが、それはさておき、最初は、諸先輩の良いところを「そのまま」取り込んでしまって、取り込んでから微調整するがよいと思います。「そのまま」が大事です。


そのために、教育係の私の責任は重大なのですが、私がお勧めする仕事観は、「自分の仕事が会社にどんな付加価値をもたらしているかについて意識をもち、日々工夫する」ということです。


「付加価値」「意識」「日々工夫」と3つに分けて説明します。

  • 付加価値

まず、「付加価値」について。これは、抽象的で難しいですねえ。簡単にいうと、仕事をすることによって新たに生み出される価値ということです。


一生懸命仕事をしても、「価値」が生み出されない場合は往々にしてあります。そうならないために仕事をするたびに自問自答すべきことは次の2つです。

(1)自分のやっている仕事の目的は何か、
(2)自分のやっている仕事が、全体の中でどこに位置づけられ、どこにつながっているか

これは、私が前の会社で最初についた上司に口すっぱく言われ続けたことの受け売りです。

当たり前と言えば当たり前。何だよと思うかもしれません。私も、最初の上司に言われたときは、なんかよくわからんなあと思ったのを憶えています。しかし、今まで、これを上回る基準に出会ったことはありません。大した年数ではありませんが、働き、悩み、仕事のやり方についてのビジネス書を沢山読みました。私の月の書籍代は2万〜4万ですが、社会人の初期は仕事のやり方についての本をよ〜く読みましたねえ。その上司は私にこの2つのことしか言いませんでした。2日に1回は言われましたが。今考えても、なんてすばらしい教育を受けたんだろうと感動してしまいます。それはさておき、だまされたと思って、是非、この二つの基準を頭の片隅においてほしいです。



「(1)自分のやっている仕事の目的は何か」とは、簡単にいうと、「何のためにこの仕事をやるの」と自問自答することですね。もちろん、人に聞いてもよいですが(笑)。ついつい作業をこなすことが目的になってしまいがちですが、作業の背景にある目的を追求する。自問自答して、フィードバックを受けるうちに、徐々に「目的が何か」についての勘が養われてきます。



「(2)自分のやっている仕事が、全体の中でどこに位置づけられ、どこにつながっているか」については、契約書の審査をして、修正したい点があった場合を考えてみましょう。まず、審査結果と修正したい理由を営業さんに説明しますね。営業さんが理解してもらえるなら良いけど、理解できずに「なんじゃこりゃ」と言われることもある。そうならないように、法律に詳しくない営業さんに理解してもらえる文章を書く。営業さんに理解してもらえたら、営業さんは契約書の修正をお客さんに提案する流れになります。お客さんが提案を受け入れてくれるのか、受け入れてくれないのか。受け入れてもらえるよう、変更理由を説得的にしなければならないですね。


最終的には、営業さんの契約の場合、お客さんと契約を締結して取引が始まり、売上や利益が上がるという流れですね。ところが、修正を提案したら、「そんなうるさい会社とは取引しない」とお客さんに言われてしまうこともある。他方で、契約書の審査で、うちの会社にとってものすごいリスクが書いてあったのに、それを見落とした場合、これも大変です。ものすごい損害賠償を請求されるかもしれません。今の私でも見落としがないか、ドキドキしながら、審査してますがね。


こんなことを考えながら、仕事をやると、自然と付加価値の高い仕事になると思います。

  • 意識

次に、「意識」について。
ちょっとした「意識」の差が大差になるという話です。
これは私の乏しい経験に基づくものなのですが、仕事のできる人、仕事のできない人とを分けるのは、普段のちょっとした意識の差だと思います。死ぬほど頭の良い人は別にして仕事ができるなあと私が思う人は、どう付加価値を自分の仕事につけるかについて、しつこくしつこく考えている人です。考えて仕事をしているか、考えずに仕事をしているか、一見ちょっとした意識の差なのですが、本当に残酷なくらい大きな差となって出てしまうのを目の当たりにしました。簡単に言えば、私より、年上で社会人経験も長い人で仕事ができないなあと思う人は何も考えずにダラダラ仕事をしている人が多い。私も家庭との兼ね合いがあり(笑)そんなにストイックに仕事をしているわけではありませんが、何も考えないで仕事をすることは、自分にとっても会社にとっても、かなりアンハッピーであることだけは指摘しておきます。

  • 日々工夫

最後に「日々工夫」です。これは、意識という話とも繋がりますが、付加価値の質を少しずつでも良いので上げていくということです。
自分の能力や仕事の付加価値などが向上するための前提は、「己を知る」、つまり、自らの置かれている立場、自らの欠点に意識的になることです。自らの欠点を直視するのは勇気がいりますよね。私も徹底できているか心もとないところではあります。自らの置かれている立場、自らの欠点に意識的にならないと、どのように向上してよいのかがわかりませんよね。努力する方向を間違えると、何の意味もありません。冷静に、自らの立場や、自らの欠点を意識するよう心がけて欲しいです。「岡目八目」と言う言葉もあります。自分のことはなかなか冷静に意識できませんよね。上司や周りの人の意見を素直に受け止める謙虚さ、素直さは、とても大事です。




さて、付加価値の質を上げていくという話をしましたが、仕事のレベルアップは、次のステップで考えるとわかりやすいと思います(『新入社員のための仕事の基本コース1』48頁〜49頁(非売品、2005年、株式会社日本能率協会マネジメントセンター)を参考にしました。)。

「正しく仕事をする」⇒「早く仕事をする」⇒「ラクに仕事をする」⇒「より良い仕事をする」

基本的に、この順序で仕事をレベルアップしてもらえるよう、指導していこうと思います。

「正しく仕事をする」。これは、仕事のレベルにもよりますが、指示に従い、正確に仕事をするということですね。指示に従わない、指示をうまく理解できない、ミスがあると駄目ですね。

「早く仕事をする」。これは指示に従って、正確に仕事ができるようになってから、スピードを上げていくということです。スピードが早ければ早いほど、コストパフォーマンスがよくなりますよね。難しいですが、スピードが早くなって不正確になっては駄目です。

ラクに仕事をする」。これは、指示に従い正確に仕事ができ、スピーディーに仕事ができるようになってから、もっと効率的に仕事ができないのか考え、実行するというということです。

「より良く仕事をする」。これは、上で効率的に仕事ができるようになってから、この仕事はそもそも必要なのかといったことを考えて実行するということです。

これらの区分は現実とは多少異なるかもしれませんが、自らの仕事を振り返るときに有益な視点になると思います。

まずは「正しく仕事」ができるように。正しくできる仕事を徐々に増やしていく。次は「スピード」、そして「ラクに」という感じで、レベルアップしていきましょうね。