【本】佐藤優『読書の技法』
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 単行本
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毎月400,000字の原稿を書きながら、300冊の本を読む著者の読書術。
著者の本を私は8割くらい読んでいて(おそらく)、既視感・既読感を感じる箇所はあるものの、こうやってまとめた本が出ると、それだけでお得感があります。
著者のこれまでの本でさほど言及されていない点は、基礎知識がしっかりしているからこそ大量の本が読めること、高校の教科書が基礎知識の基準になることの、2点です。
私の業務である法務の本は読まねばならないのですが、そればかり読んでも弁護士の先生には敵わないと思い、ここ2年くらいは色々な分野の本を読むようにしています。思想・哲学系、ノンフィクション、歴史ものなど。ただ、読むのに時間がかかったり、途中で挫折する本が最近多くなってきました。その理由は、基礎知識がないのに背伸びしているからかと、この本を読んで思い至りました。
とはいえ、基礎知識の習得は大変だと思います。私の経験からすると、2つの側面で難しいです。
第1に、何が基礎知識なのかがわからないこと。
第2に、基礎知識が、ああこの知識は本当に大事だよねえとしみじみしながら、その大事さがわかるためには、基礎だけやっていてもわからないこと。
私のつたない法律学の勉強の経験でも、2点目がじわじわわかってきたのは、朝から晩まで法律を勉強しだして5年目くらい。基礎知識は大事とわかっていても、応用レベルで七転八倒しないと、基礎知識の本当の大事さは(凡人には)分からないのかなあとは思います。ただ、これは、時間が解決してくれる問題なのかもしれません。
1点目は、高校の教科にある科目なら、筆者がいうように高校の教科書レベルをしっかりやることで大丈夫なのかなあとは思いますが、その他の科目は結構大変なのではと思います。
例えば、民法の基礎。一応、民事法学の修士なので、民法の教科書はいろいろもっていますが、これが基礎知識だという本は、私が学生の頃に見た範囲では、まとまって記載されているものは、なかったような気がします。おそらく私が言う基礎とは、大陸法的な民法の理解で、英米法的な教科書が多くなっているのも一つの理由かとは思います。学生時代は、宮島司先生の会社法の教科書(今は絶版)が私的自治について、結構突っ込んだ説明をされていて、感動した記憶がありますが。
私が社会人になって、おおこれは素晴らしいと、読みながらウルウルしていたのは、次の本です。
- 作者: 金井高志
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2008/04/24
- メディア: 単行本
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この本は、知的財産権との比較ではありますが、私が民法で本当に大事だと思っているところを余すことなく説明しています。話はずれますが、この本は本当に良い本です。
まあ、そんな感じで、基礎知識の習得は、簡単そうに見えて、意外と大変です。
学問ですから、いろいろな学説があり、それをいちいちフォローし検証していくのは、初学者には無理でしょう。ですので、筆者が言うように、20年くらい前の通説的見解を、ある程度しっかり押さえておくのがまず第一歩なんでしょう。そのあとどう進むかは、その科目を学ぶことで自分が何をしたいのかによって、変わるんでしょう。
いずれにせよ、何かを学ぶというのは、忍耐が必要ということを改めて感じました。仮に高校の教科書をしっかり押さえるとしても、結構大変ですよね。今さら教科書やるのは、かなり、覚悟が要りますし、時間もかかります。
筆者もいうように、時間はあくまで有限であり、残りの人生で何を学び、何を学ばないかを明らかにしないと、あっという間に時間オーバーになってしまいますね。自分の知的営為の方向性について、考えさせられる本当に良い本です。