【本】鈴木博毅『「超」入門 失敗の本質』(その2)

「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ

「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ

『「超」入門 失敗の本質』の感想その2です。
本書では、イノベーション創造の3ステップとして次が挙げられています。


《ステップ1 戦場の勝敗を左右している「既存の指標」を発見する
ステップ2 敵が使いこなしている指標を「無効化」する
ステップ3 支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う》(107頁)

これで思い出したのが、次の本。

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

少し前に映画化されましたね。野球をデータという切り口で見るのが好きな方にはたまらない本だと思います。


この本の内容を乱暴にまとめると、予算がそんなにないアスレチックスが、他の球団とは違う指標で選手を評価・獲得し、快進撃を成し遂げたという本です。


打者の場合、足が早い、打率、打点とかではなく、基本的に出塁率長打率で評価しています。なので、目方が重くて足が遅く打率はパッとしなくとも、出塁率長打率がよければ、獲得。足が遅い選手を他球団は取りませんので、年棒は安くて済む。何年か活躍すれば、他球団へ売り払い、他のよい選手を獲得する。


改めて読み直すと、今法務人員の採用活動をしていることもあり、他社とは違う指標で法務人員を評価し、採用しているのかを自問自答してみたくなりました。


私が所属している会社は、契約書審査のうち英文契約書の占める割合が7割程度です。自分のことはさておき、法律英語の読み書きができないと、仕事は限定されてしまいます。


ただ、英語もできて、法務経験もあってという方は、一般社員でもそれなりの給料をもらっていらっしゃいます。私が所属している会社ですと、管理職以上の給与になります。


両方を追い求めるのは非現実的。優先順位をつけるなり、何か違う指標で見極める必要があります。


3年ほど前に一人採用しましたが、その際は、司法試験崩れを狙ってました。ロースクールの未習コースの人で、3回試験に落ちて途方に暮れている人をターゲットにしてました。当時は、指標なんて考えはなかったですが、供給過多ゆえ、多くの候補者から選択できると思ってましたし、経験がなくても1回死んでますし、試験に受かっても就職できない方もいらしたので、意気に感じて、ガンガン成長してくれるだろうと。英語も気合を入れればなんとかなるだろうと。


で、その際に、重視したのが、法なるものの理解力。私司法試験には受かりませんでしたが、伝統ある司法試験ゼミに所属し、実力はあるけど合格するのが遅い優秀な先輩方に鍛えられた(皆様今は、裁判官、検察官、弁護士になってます)ので、通常の受験生より、法なるものの理解力は高いと思ってます。書いている文章を見れば、だいたいどんな勉強をしていたのかが分かります。で、よく理解していないけど暗記で乗り切るみたいな司法試験崩れを見極めるべく、ペーパーテストを実施しました。問題の詳細はアレなので、詳しく言えませんが、所有権の本質、組織法と通常民事法の違い、金銭賠償の原則から差し止め請求の限界、労働法と民法の違いという感じで、まあ、暗記だけ人間は顧みもしない論点について試験を実施しました。何十人も試験をやって、ものすごく点数の良かった人を採用しました。ただ、入社から1年半程度に私がとてつもないトラブル案件を抱えていたこと、今所属している会社がの〜んびりちんたらな会社でその社風に早くも染まったこと、性格がおとなしいこともあり、法務パーソン失格となりました。今は、法務以外の仕事をしてます。もったいない。

私の指導能力の低さはいかんともしがたいので視野の外におきつつ(苦笑)、反省点の第1は、今所属している会社のようにのんびり雰囲気の会社では、初めて社会人になる人が凄く成長するのは難しいということです。反省点の第2は、法なるものの理解は高いに越したことはないが、複数人で法務をやる場合は特に、アウトプットに直接関連するわけではないということでした。


その後、今から2年前に2人採用しました。反省点を踏まえ、ある程度社会人経験のある人、法なるものの理解よりも向上心の有無やコミュニケーション能力を重視しました。もう凄い人が1人みつかって、あとは人事担当役員対策として、候補者が1人ではなく複数上げるための当て馬探しで、法律の素養はなく、司法試験崩れかつ社会人経験なしで、面接の対応がやたらよかった人を当て馬にしました。そうしたら、なんと、募集人員1人のところ両方採用というかなり驚愕の結果に。本命は大活躍。はっきり言って私より仕事できます。ただ、当て馬の介護(苦笑)は、please refer to previous weblogということで。


さて、幸いにして、またも法務の人員を増やしていただけるとのありがたい話があり、10数名の方の面接やペーパーテストやらをしているところです。現時点での結論は、法務パーソンとしての最低限の素養があり、TOEIC700点以上であれば、国際法務経験がなくてもよいかなと。ペーパーテストも内容を一新し、抽象的な法なるものの理解よりも、法務担当者として契約書の審査依頼があった際にどんなことを聞くか、具体的な契約書の条文をどう直すかなど、実践的なことを聞くことにしています。


さて、指標の話に戻ります。法務のペーパーテストをしている会社は少ないでしょう。所詮、法務なんて、どんだけ文章書いたかみたいなところがあるので、その意味で、仕事人としてどの程度の力量があるかについての貴重な指標を手に入れているかなあと。具体的にどんな点を重視しているのかは、企業秘密ですが、心ある法務パーソンなら首肯して頂ける点を重視しているつもりです。その意味で、斬新ではないのかしれませんが、職務経歴書や面接で判断という通常の指標ではなく、かなり時間をかけて作ったペーパーテストの点数という指標で判断している点で、他社との違いを作っているつもりではあります。まだわかりませんが。