【本】大川哲也ほか編著『暴力団排除条例ガイ​ドブック 』

今さらながら、反社会的勢力対応してます。。


4年くらい前に、政府方針が出て、東証からコーポレートガバナンス報告書に反社会的勢力への対応を書けとか言われ、焦りながら、内部統制システムの基本方針を改正し、一安心ということで放置してました。


ただ、東日本大震災関係の補助金を反社関係者が不正受給していたことを受け、金融機関からの締め付けが厳しくなっており、リアクション法務再登板でっす(笑)。


そんなわけで、ブログ等で高評価でしたが、小遣いの関係で買えなかったこの本買うたですよ。

暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)

暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)

  • 作者: 大井哲也,黒川浩一,株式会社エス・ピー・ネットワーク総合研究室
  • 出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本
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実践的で良い本ですね。特に、海外との取引が多い会社にとっては、海外反社対応の頁はかなり役に立つものと。


さて、リアクション法務な私は、弁護士の先生より、政府指針や、暴排条例がなくても、当然役員の善管注意義務違反ですとお叱りを頂戴しました。でも、暴排条項の入った契約なりを取引先すべてと締結、自社専用のDBを作ることまで、善管注意義務の範囲なんですかね。。。
上場廃止基準はあるものの、政府指針や条例なく、不当要求に毅然と対応する以上の義務が課されるのかについては、違和感を覚えます。
その違和感を明確に言語化してくれているのが次の本。

小沢一郎はなぜ裁かれたか―日本を蝕む司法と政治の暴走

小沢一郎はなぜ裁かれたか―日本を蝕む司法と政治の暴走

暴排条例について言及している箇所を引用します。

《佐藤 この条例は怖い。要するに近代法じゃないんですよ。暴力団員だろうが(中略)「この組織に属している人間は犯罪を起こす可能性が高いから、付き合ってはいけない」という発想でしょう。これは近代法の人権意識から相当逸脱している。
石川 罪を犯したら誰であろうが罰しなきゃいけないですけどね。
佐藤 具体的な行動に対してはね。「あの野郎、ぶん殴ってやりたい」とハラの中で思うだけでは罰してはいけないというのが近代法なんです。ぶん殴って初めて、あるいは拳が出た瞬間に押さえると。》(86頁)


そうそう。その通り。契約自由の原則もありますし、善管注意義務の対象となるには、政府指針やら暴排条例という広い意味でのルールがあることが必要なんだと、個人的には思う次第。


とはいえ、対応をしなければならないという結論にかわりはなく、実益のない考察ではあります(苦笑)。


さて、話は、『暴力団排除条例ガイドブック』に戻りますが、興味深かったのが「反社会的勢力の端緒チェックリスト」。与信管理をやっている方にとって、既視感のあるチェックリストなのかもしれませんが、私は与信管理はやったことがないので、かなり新鮮でした。こんな風に取引相手を選別するんですね。


私は、元外務省の佐藤優氏の著作が大好きです。リーマンショックが起きて、漠然と戦前の世界大恐慌を想起しました。大雑把に、世界大恐慌こそ第二次世界大戦を引き起こしたとても重要な要因と理解していたので、これから戦争が起きるんだろうかと心配になりました。今自分のいる世界はどんな方向に向かっているのかについて、知りたいと強く思い、たまたま書店で目について買った佐藤氏の次の本をきっかけに、同氏の著作を貪るように読み続け、もう4年。

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

公刊されている単行本ベースですが、おそらく同氏の本の8割は読んでいる自信があります。うまく表現できないのですが、深いんですよ。読めども読めども、同氏の深さを感じてしまい、もっと同氏のことを知りたくなって、ついついわずかな小遣いの多くを彼の著作に費やした4年間。あまり難しい本を読むだけの教養のない私が読んでいる本がベースになりますが、沢山著作を出している人でも、だいたい5冊以上読むと、飽きてきます。誤解を恐れずに言えば、底が浅いので、既視感を感じてしまいます。そういう人に限って、最初に出した本に書いてあることの焼き直しだったりします。佐藤氏の著作を4年にわたり何十冊と読んでますが、既視感どころか、読み直して新たな発見があることもしばしば。


話が脱線しました。佐藤氏が稀代のインテリジェンスオフィサーであることに異論を挟む人は少ないと思います。せっかく、結構な額を同氏の著作に費やしているのだから、彼のインテリジェンスのノウハウを仕事に生かせないかと、ここ1,2年考えていましたが、反社の取引先チェックに使えるかもしれないなあと思いました。(前振り長すぎますね)


今所属している会社のようなB to B Company では、お客様の調査は、与信限度額に影響してきますし、焦げ付いたりすると大変なので、コスパや責任の所在を明らかにするためにも、結構しっかりやる印象があります。ただ、自社に部材を納入してくださるサプライヤーについては、お金を回収できないというリスクはないので、部材の品質とあとは環境対応あたりが主な評価基準になりがちです。それ以外のことを詳細に調査するのは効率が良いとは言えません。他方で、サプライチェーンマネジメントという名のもとに、児童労働の禁止などCSR系の要求を自社だけでなく、自社のサプライヤーにも要求するのが当然だという趨勢が弱まることはないでしょう。そして、東日本大震災に端的に表れた、事業継続計画を自社だけでなく、自社のサプライヤーにも要求する趨勢も同様です。少し文脈は違いますが、ドッドフランク法の紛争鉱物の調査も、サプライチェーンマネジメントの一環と言ってよいでしょう。本投稿の主題である(脱線しすぎですが)反社会的勢力対応だって、サプライチェーンマネジメントの一環になるんでしょうね。


サプライチェーンマネジメントについて、いろいろ思うところはありますが、要求されたことはやらざるを得ません。やるなら効率的に。特に、サプライヤーについては、これまでの品質・環境だけでなく、反社会的勢力、CSR、事業継続計画、紛争鉱物についての対応を一括してモニタリングしていくのが望ましいのかなと。


そのモニタリングの際に、佐藤氏の著作から得たインテリジェンスのノウハウを活かしたいなあと、願望というか、妄想してます。